鳥取の民藝をめぐる旅もいよいよ最終日。
ここまで、4ヶ所の窯元を訪問し、鳥取の街並みをめぐってきました。
1日目は鳥取民藝美術館のおとなりにあるたくみ割烹店でランチをしたあと、倉吉や湯梨浜へ。
2日目は倉吉白壁土蔵群を散策したあと、3ヶ所の窯元を訪問しました。
旅の最終日は、この旅の大きな目的でもある鳥取民藝美術館を目指します。
いざ、鳥取砂丘へ
3日目は鳥取駅前から出発。2日間の旅の相棒のレンタカーは返してしまったので、バスで鳥取砂丘を目指します。
バスに揺られ、30分ほどうとうとしていると、鳥取砂丘の最寄りバス停に到着。
帰りのバスの時間を見ると、1時間後に戻ってくるのが良さそうですが、砂丘までは歩いて10分くらいかかりそうな上に、結構な急坂を登る必要がありそうです。
しかし、せっかくここまで来たので気を取り直して一人、朝の鳥取砂丘を目指します。
せっかくなのでリフトで向かいました。
目の前に広がる鳥取砂丘はとても雄大。海の手前に大きな山のような「馬の背」があり、そこを登っていく人が小さな粒に見えるほど遠く感じます。
砂丘の入り口からは下り坂になっていて、真ん中あたりまで進むと今度は馬の背に向かって大きな登り坂が続いています。
意を決して登っていきますが、地面が砂地なので思うようには進みません。
遮るものもないので、海からの風がびゅうびゅう吹きつけてきます。
馬の背を登り始めて数十分。ようやく頂上に到着しました。
曇天の下に広がる日本海、わずかに潮の重さを湛えた風、どこまでも続く砂の色。
あらゆる不安も心配も忘れて、ひととき海と砂丘を眺めて過ごしながら、絶対また鳥取に来よう、という気持ちになりました。
古本屋の邯鄲堂へ
鳥取砂丘でなんとか予定のバスに乗り、再び鳥取駅へ。
無理してでも急いで戻りたかったのは、乗り継ぎたいバスがあったから。
次に向かったのは鳥取駅から2キロほど離れたところにある邯鄲堂(かんたんどう)さん。
旅先ではその土地の個性的な本屋さんを探すようにしているのですが、鳥取にも気になる本屋さんがあったので行ってきました。
こちらは鳥取民藝美術館の元学芸員でもある店主さんが開いた古本屋さん。
誰かの秘密基地に迷い込んだような、仄暗い店内で煌々と緑色に光るスタンドランプが印象的。
空中に線路を走らせているように本がぎっしり並んでいる光景は、異世界のようでもあります。
独特な世界観を持つ本屋さんに行ってみたい方はぜひ訪れてみてください。
鳥取民藝美術館
この旅の最大の目的である鳥取民藝美術館へとやって来ました。
こちらは初日に訪れたたくみ割烹店のすぐ隣にあります。
鳥取民藝美術館、たくみ工芸店、たくみ割烹店の3つの建物が並んでいて、山陰らしい赤茶色の瓦に白い壁で統一されています。
鳥取民藝美術館の開館に尽力したのもやはり、吉田璋也氏です。
鳥取民藝美術館の中にはかつて吉田璋也が使っていた暮らしの道具や、全国各地で集められてきた民藝の品々が並んでいます。
昭和初期の民藝運動の興りから、吉田璋也が地元・鳥取でどのように尽力してきたか、また山陰の民藝がどうやって広まっていったのかを詳しく知ることができました。
たくみ工芸店
たくみ工芸店は鳥取民藝美術館のすぐとなりにある工芸品のショップです。
ここでは鳥取や山陰を中心に、全国各地の民藝のうつわや手仕事の道具を購入することができます。
たくみ工芸店の歴史は古く、1932年(昭和7年)に開店しました。
吉田璋也は山陰の職人たちを指導し、新作民藝という新たな民藝の方向性も打ち出していきました。
旅の2日目に訪れた因州・中井窯の代名詞ともいえる掛け分けのデザインはまさにそのような流れから生まれてきたものです。
吉田璋也は今でいうところのプロダクト開発だけではなく、職人がものづくりを継続できる仕組みを作るため、たくみ工芸店を作り、山陰地方で作られた手仕事の品々を販売できる場をつくりました。
いまでこそ珍しくはないですが、昭和初期にものづくりから販売まで総合的にプロデュースしていた吉田璋也はかなり先進的で稀有な存在だったのではないだろうか、とこの旅を通じて感じる場面が多々ありました。
温泉で疲れを癒して帰路へ
今回の旅は鳥取の民藝にフォーカスしてきましたが、ほかにも感動したことがあります。
それは鳥取の食べ物の美味しさと、温泉の豊富さです。
鳥取と言えば梨が有名ですが、他にもカニやモサエビなどおいしい魚介もたくさんあります。
そして、県庁所在地の中心駅である鳥取駅から徒歩圏内に温泉宿があり、日帰り温泉も楽しめます。
温泉街というと街の中心地から離れていてアクセスが不便なことも多いのですが、駅前で温泉に入れるポテンシャルの高さに感動しました。
今回は窯元を中心に訪問しましたが、次回来るときは他の手仕事についても触れる旅がしたいと思います。
鳥取ののんびりした空気とものづくりの精神が大好きになったので、また訪れたいと思います。
まとめ
2泊3日の鳥取の民藝をめぐる旅は新たな発見と出会いに恵まれたものとなりました。
普段使っている道具が生まれる土地を歩いてみると、暮らしの中で何気なく使っているうつわを見る視点が少し変わるような気がしています。
今後は旅の中でも印象に残った出会いや場所について不定期で更新していきます。