柳宗悦と愛知の民芸展は2023年7月1日~9月24日まで豊田市民芸館にて開催中です。
観覧料は無料ですが、第一民芸館、第二民芸館にわたって充実の展示内容となっています。
今回は柳宗悦と愛知の民芸展を見学してきたので、レポートをお届けします。
柳宗悦と愛知の民芸展
愛知県には、日本六古窯にも数えられる「瀬戸」「常滑」があり、古くから窯業が盛んな土地です。
豊田市民芸館の設立にも尽力した実業家・本田静雄氏(1898~1999)は、陶磁器や古窯研究、茶道に精通していたことでも知られ、民芸館にも多くの寄贈品が収蔵されています。
瀬戸・常滑・犬山の焼きもの
今回の展示では、瀬戸で作られた数多くの石皿や、行灯皿、常滑の大きな甕や壺など、かつての日本人が日常的に使っていた道具が展示されています。
現代の生活ではあまり見かけなくなったような道具もあり、どのように使っていたものなのか想像するのも楽しめます。
柳宗悦は昭和初期に瀬戸の石皿の調査、東栄町のざぜちの調査のために愛知県を訪れています。
愛知の民芸
愛知県には焼きもの以外にもさまざまな民芸があります。
今回の展示のメインビジュアルにも掲載されている扶桑町の端折傘は400年以上の歴史を持つ伝統があり、扶桑町の無形文化財となっています。
また、東三河の東栄町で鎌倉・室町時代より続く花祭で使われる「ざぜち」と呼ばれる切り紙や、有松・鳴海の絞り染めなど、祭りや生活を通じて伝えられた文化への理解を深めることができます。
ほかにも、三河木綿や、柳が昭和30年代に感銘を受けた円空仏も展示されています。
手仕事の日本
今回の展示では「手仕事と日本」(著:柳宗悦/岩波文庫)の文章とともに愛知各地の民芸について紹介されています。
「手仕事と日本」は柳宗悦が全国各地を訪れ、地域ごとの民藝について考察し、記した本です。
初版発行が1948(昭和23)年となっていますが、戦後すぐの当時でも昔ながらの手仕事のものづくりが失われつつあり、近代化によって変化が進んでいる様子が伝わってくる箇所もあります。
昭和15年ごろの日本の地方の様子についてもわかるので、こちらの本もあわせて読むと柳宗悦と愛知の民芸展がより深く楽しめるのではと思います。
名古屋民藝
昭和30年代に発行されていた「名古屋民藝」の冊子も展示されていました。
「民芸の店」「民芸料理」などのお店の広告もあり、当時の名古屋では民芸関係のお店や活動が盛んだったことが伺われます。
展示されていた名古屋民藝のバックナンバーが昭和31年ごろ~昭和36年ごろだったので、1961(昭和36)年没の柳宗悦の最晩年の時期と重なります。
その後の名古屋周辺の民藝運動がどうなっていったのか、改めて調べてみたいと思いました。
豊田市民芸館について
豊田市民芸館は昭和58(1983)年に第一民芸館が開館し、2023年で40周年を迎える博物館です。
矢作川の隣の森の中に蔵のようなつくりの建物が点在していて、とても心地のよい空間です。
この日は青紅葉が美しく、酷暑の中でも木陰で涼むことができました。
また、連続講座も開港されていて、染織や陶芸など手仕事を体験することができます。
敷地内に穴窯もあり、焼成体験できるプログラムもあります。
豊田市民芸館から車で約5分ほどの場所には「民芸の森」があります。
こちらにはクヌギ林の中に本多静雄氏が暮らした屋敷があり、田舎家や茶室、日本で最も古い時代のコンクリート電柱などが見られます。
まとめ
今回の展示では、陶芸以外にも愛知県各地の手仕事について触れることができます。
人々の暮らしや祭りなど、手仕事を通じて民俗への関心も深まる内容だと感じました。
古い時代の道具は現代では縁遠くなってしまったものもありますが、いまの日本での生活にも通じる部分もあり、暮らしについて改めて考えるきっかけになりました。
豊田市民芸館もとても気持ちの良い場所なので、機会があればぜひ訪れてみてください。
展示概要・アクセス
「柳宗悦と愛知の民芸展」
第一・第二民芸館
観覧料:無料
2023年7月1日(土)~2023年9月24日(日)
9:00~17:00
名鉄三河線「平戸橋」駅 徒歩15分
愛知環状自動車道「豊田環八」インター 車で10分