400年以上の歴史を誇り、国内シェアの9割を占める高岡銅器。
富山県高岡市は鋳物のまちとして知られています。
現代でも市内に鋳物メーカーが数多くあり、一大産業として発展してきたことが伺えます。
今回は高岡市で大正時代に創業した鋳物メーカーの能作さんに訪れました。
高岡のものづくりの一端を工場見学で垣間見ることができたので、ご紹介していきます。
鋳物の街・高岡はどんなところ?
高岡市は富山県の北西部にある県内第二の街です。
その歴史は古く、1609年に加賀藩の2代目藩主である前田利長が高岡城に入城したことに遡ります。
高岡が鋳物の街になったのは、加賀藩が鋳物師を集めて鋳造を奨励したことがきっかけで、400年以上の長い歴史があります。
はじめは釜や鍋、農具などの日用品を作っていましたが、お寺の梵鐘や大仏、銅像などの大きなものから、仏具やキセルような小型のものまで幅広いものづくりにその技術が生かされてきました。
明治期には万国博覧会に出品されたこともあり、いまでは伝統工芸品として広く知られるようになっています。
能作とは
今回伺ったのは能作本社工場さん。(以下、能作)
1916年に主に仏具や花器を製造する鋳物メーカーとして創業した企業です。
工場見学のほか、鋳物製作やショップ、鋳物で作ったうつわと富山の食が楽しめるカフェが併設された複合施設となっています。
エントランスに入ると圧倒されるのが、壁一面に飾られたカラフルなオブジェ。
これらは全て鋳物の型なのだそう。
鋳物の型は誰が作ったものかわかるように、色を分けているそうです。
これだけでも、これまでの数々のものづくりの歴史の深さを感じることができます。
能作の工場見学
能作では、実際に鋳物を作っている現場のすぐそばで工場見学をすることができます。
常に機械が作動しているのでイヤホンを通して社員の方の解説を聞きながら、約30分の工場見学をしてきました。
- 1木型を作る
完成形と同じ形を木で作り、枠の中に設置
- 2砂で鋳型を作る
枠の内側に砂を敷き詰めて押し固め、木型を抜き取って鋳型が完成
- 3金属を鋳型に流す
高温で熱して溶かした金属を流し込む
- 4型から取り出す
金属が冷えて固まった後、型から外す
- 5仕上げ・加工
表面の研磨や着色を行い、仕上げをしたら完成
効率よく多種多様な製品を作るため、金属を流し込む曜日が固定されていたり、型を作りためていたりするなど、随所に工夫が凝らされているポイントを伺うことができました。
仕上げの工程では機械化も取り入れ、細かい工程では人の手によって研磨を行なっていきます。
多種多彩な製品を作っている能作では、全ての工程を手作業で行うと、納品までに数年を要してしまうそうです。
機械も活用しているとはいえ、機械のセッティングのひとつひとつも職人さんたちの手によって細かく調整する必要があります。時代に合わせてアップデートしながら、日々ものづくりが進められていることを実感できました。
また、高岡銅器の大きな特徴として、各工程ごとに分業制となっていることも挙げられます。
鋳型の製作や鋳造、研磨、着色に至るまで、高い技術を持つ職人たちが分業して製造しています。
ずっと同じ工程を専業で繰り返し行うため、高品質な製品を作り続けることができ、さらに技術も磨かれていきます。
こちらの能作でも、すべての工程を高岡で行なっているそうで、色つけや彫金についても高岡の職人さんに分業しています。
高岡銅器のうつわで食を楽しむ
2000年代以降、能作は自社開発のプロダクトを多数生み出していきます。
なかでも人気なのが、錫100%で作った食器。
一般的にはやわらかい錫には他の金属を混ぜて硬度を加えますが、敢えて他にはないものづくりをということで錫のみで作られた製品が生まれました。
錫のぐい呑みで飲むお酒は、いつも使っているぐい呑みと比べると、日本酒のカドが取れて、とてもまろやかな口当たりになったように感じました。
味わい深いだけでなく飲み口も薄いので飲みやすく、美味しくお酒をいただくことができました。
まとめ
今に至る街の産業は、地域の歴史とは切っても切れない縁があります。
今回の旅を通じて、改めてものづくりの時間を経てきた地域は面白いと実感しました。
今回は時間の都合で断念しましたが、また機会があれば鋳物づくり体験もしてみたいと思います。
能作さんの製品は全国の直営店でも手に取ることができますが、ぜひ高岡に訪れたらこちらのファクトリーにも訪れてみてください。
ものづくりの技と心を知りたい方におすすめの場所です。
店舗情報
株式会社能作 本社工場
営業時間:10:00〜18:00
定休日:なし